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唐突に始まりだんだん増えて行く講評(1)

 自分がどんなお題を出したかも忘れてしまった今日この頃ですが、みなさまお元気ですか? とにかく全作品ファーストインプレッションで感想は書いてあるのです。それをつらつらと直しながらだらだらと増やして行きます(えー。
(新しい講評がどんどん上に増えて行きますよ)

講評17〜30はコチラ
オープン参加作品感想


16・トラバでボけましょう2008夏(秋) に投稿してみた Kurt.(2+2=5)
 冒頭、すごく読みたくなる滑り出し。作者はオチがつかないと書いておられますが綺麗にオチていると思います。文章が気持ちいいですね。モノローグが流れたまま口調が転回する瞬間もウマイと思います。
 ところで、彼女はなぜそもそもそんな目に遭ったのか・・・。ミステリー的種明かしもちょっとほしかったような気はしますが、長さとテンポがちょうどよい感じなので、入れるとバランスが崩れるかも。敢えて彼女の今の気持ちにだけ焦点を当てたこの形で正解なのかもしれません。


15・トラバでボケましょう?!ストーキング ekino_taro(ScienceFictionShortStory)
 サイエンス・フィクション、いい響きですね。思わずロッキー・ホラー・ショーを歌い出したくなりました。これは○○トリックというか。せっかくの仕掛けのネタバレがやや早過ぎる気がしました。というか、やっぱりラストでばらしてオトしてほしかった。同案異曲ネタが清水義範にあったと思うのですが、ネタばらしの間までにいかにどちらとでも取れる叙述を詰め込みひっぱれるかが勝負のアイデアだと思います。
 応募作ではない記事で連載中のSF小説「僕の電気はあの子のパソコンを動かすのさ」がむちゃくちゃおもしろいです。こちらの完成度に心奪われて応募作にはやや辛口になりました。この文体もかなり知っている気がします。なんとなく著者は女性だと思っています。違っていたらごめんなさい。続きも楽しみにしています。


14・トラバでボケましょう2008夏秋 レベル7 ho_neko(放浪猫の遊び場)
 シンプルなお題にシンプルなボケ。直球勝負ですが、ボケの原点はこういうことだったはず。キレもよくて清々しいです。「ボケ」とWでダジャレになっているのが嬉しいですよね。
 そしてこういうネタは早い者勝ちです。あとから応募する方はざっとでもやはりダブリ・チェックは必要でしょうね。


13・ rei_ayakawa(宇宙のどこかの片隅で。)
 もう好みの問題でしかないのかもしれないのですが、ここまでの応募作の中でもっともチャンプに近い男ですよ、むちゃくちゃツボを突かれまくりですよ。前回チャンプなのでチャンプにするとチャンプのキャッチボール、それはいかがなものか、というわけでチャンプにはしませんがオレの心のチャンプ(応募時点)ってことでひとつよろしく。チャンプチャンプ。
 一度チャンプを獲得した余裕からでしょうか。ラクに楽しく書いていますね。序章、特に好きです。「その穴は何?」というお題に対して「○○の穴」ときちんと答えているところ、それに絡めたラストが軽くも深くも読めるところ、どこを切ってもエライと思います。チャンプチャンプ。


12・美ら海 sofia_ss(SOFIA_ SS)
 うまいですねえ。正直これはとても好みのテイストです。ご本人もコメント欄で書いておられる通り、しょっぱなのアイデア(たくさんの穴と宇宙人)がひとつ前のkatuo0076さんとかぶっているのです(トラックバックの時間から、ほとんど同時に書かれていたものと思われます)。そして私が個人的にはkatuo0076さんのほうで惜しいと思ったところを存分に生かして料理されています。
 端的で過不足のない文章も気持ちがいいです。怖いオチなのになんだか気持ちのいいのんびりとした余韻のある読後感が不思議。タイトルも味わい深いです。
 こんな終末ならそれはそれでいいかもしれないですね。


11・地上の星。 katuo0076(カツオくんは永遠の小学生。)
 前ステージ、前々ステージを通しての唯一前人未到の皆勤賞、通算27作目のトラボケ参加作品です(グラチャン大会を入れれば28作)。過去最多の3回チャンプ獲得も伊達ではないのですね。それを踏まえた上で、この作品は「参加したことに意義がある作品」以上でも以下でもないと辛口にならざるを得ません。
 前フリが長いですね。この作者の持ち味であるノリがうまく流れていないな、という印象です。元ネタのCMもそもそもよくできているボケなので素材以上のボケを重ねるのは難しいかも。
 語り手が途中からいなくなって主人公が変わってしまってます。中途半端にイイ話にまとめてしまったのも持ち味が生かし切れていないところだと思います。「穴がたくさんある」というのは絵的にもおもしろいアイデアだし、未出だったのでそれを生かした展開にならなかったのももったいない気がしました。


10・トラバでボケましょう2008夏秋 ormoa(ばれたら妻に殺されるblog。)
 私、これ好きです。意外なオチという意味では一番意外だったかも。ラストの二行がまったく想像の埒外の着地点で気持ちよく裏切られました。意外な着地は内容だけではなく主人公も、でしたね。
 笑えるだけではなくそこはかとなく幸せな気持ちになれるところがなんかよかったです。


9・おもいでがいっぱい miniusagi52(明日 晴れるといいな)
>別れるとか面倒くさいし。
 日記のようにさりげなく始まった冒頭、デートに向かいながらの主人公のモノローグ。これが主人公の性格を表す伏線になっていてテクニシャンです。 
 異次元への入り口であるところの穴にまず主人公が昔飼っていたカメが出現するのはエンデの「モモ」を彷彿とさせて象徴的な感じがしました。次々に現れる主人公の思い出の品、このままラベンダーの香り的ノスタルジーへと思いきや、主人公をいともたやすく奈落の底に突き落としてしまいました。かわいい顔をしてさらりと残酷。萌え。


8・Norwegian Stump (ノルウエーの切り株) bucmacoto(北の夢想科学小説)
>ばかせとは・・・解説無用であろう。 博士や大臣が偉い人ならばその正反対のおろか者だ。
 解説必要だろう。一行おきに絶妙に突っ込ませてくれる旺盛なサービス精神。導入部から心わしづかみにされました。よろしく、ばかせ!
 見事なレトリックで流暢に語られる物語世界。
>株は切り株を残して尊敬は霧散してゆくのだった。
 このあたりではお見事! と膝を打ちたくなりました。
 切り株にちょこなんと座る老人とその上空にぽっかり空いた穴。味わい深い一幅の絵のようで、テンプレ後の小難しいロジックや画像ネタは別なネタと割り切ったほうがよかったかな〜、と。アイデアがいっぱいあるのもそれぞれが捨てがたいのも(おもしろいです、それぞれ)わかるのですが、本編の余韻を断ち切ってしまうようでもったいない感じがしました。


7・ colortail(よかった探し。)
 まず本文では穴のことはいっさい語られていないし一読したときにはどこに穴があるのかがわからないと思います。次に注意深く読み返してその穴がどこにあるのか腑に落ちたとき、その風景とのどかな言い回しとが鮮烈な落差になって胸に迫ります。
 その落差はこの現象が明るく広々としたアメリカの農場のど真ん中に出現した違和感をも表しているようです。そして全編が美しく短い詩のようでもあります。


6・ボケトラバ レベル7に参戦! moufu34(ぶちまけ部屋〜カムバック〜)
 正しい発音よりもそこをどくのが先では? すぐにつっこみを入れたくなる正統派のボケであると言えるでしょう。その骨子であるシンプルなダジャレをどでかめのスケール(宇宙規模ではなく特撮映画の規模であるところが重要)で描き出した怪作です。
「小さい山ほどあるはつろう」<あらゆる意味で天才にしか書けないフレーズ。脱腸であります、いえ、脱帽であります。昔話絵本風のキャラクターと正確な飛行機のフォルム、すばらしい画力を無駄に使い切り見事です。さりげなくモチモチの木風のタッチが〜。芸が細かい。


5・『トラバでボケましょう2008夏秋 レベル7』に参加! cnabkam(ネコは「ぱるぷんて」をとなえた!)
 一読して天然だよなあ〜、と思いました。穴があったから埋める。主人公、なんだか急いでいる風なのにその行動には微塵の迷いもありません。そしてよりによってそんなもので埋めようとは思わないでしょう、フツーは。作者が「フツー」に前提にし展開している部分がすでにボケです。そして急いでいる主人公が、こんな道草を食ったくせに遅刻することもなくフツーに間に合った会場で何を困ったかというと・・・。
 これに向かう途中に転ぶ、って縁起をかつぐ向きには結構大変なことだ思うのですが「消しゴムフェチな俺」はそのあたりを全然意に介していないのが豪快で素敵。「どどでか消し(SEED)」にこだわり過ぎなのは主人公なのか作者なのか。ある意味たいへんにアレです。


4・大地の唇は 将来を予見する。 e_vans(自称ダンディ文豪(自称)の戯(ざ)れ事)
 キター!!! これこれこれですね。ストライク・ゾーンど真ん中、私がお祭りの鬼の人形なら今手を挙げて「がおー」と言っているところです。えーっと、形式の話ではなくお題の答えとしてのこの設定ですね。この手の展開は待っていましたねえ。
 そして私の大好きな駄洒落捏ねたの欧州豪華一周、いえ、コネタの応酬。ラストも華麗に決まっています。


3・彼とのデートに遅刻した時の対処法 yumi_si(こんなときどうしたらいい?〜対処法のススメ)
 一見、ほのぼのとかわいらしい作品。でも、歯切れとテンポのよさに流されて見逃しちゃいそうなところで、かなり細かく作為的にボケていると思います。
>穴の中には、異世界がひろがっていた。
>私の予想通り、あの言葉は穴に入る呪文だったらしい。
 だいたいが、これが「遅刻したときの対処法」だというならそこが大いにボケてますし。ラストのオチが物足りないような気がするのですが、それはキャラクター造形を優先した結果でしょうか。書き手である女性を創造してブログ自体がその女性のブログであるという、かなり手の込んだことをやっています。ちなみにほかの記事もクレバーでかなり私好みです。応募作よりもブラックなものが多いですが、デジャヴというかはっきりこの作風知ってるゾ、と感じるのはまあきっと気のせいなのでしょう。それが男性のような気がするのもきっと気のせいなのでしょう。


2・トラバでボケましょう2008夏秋 レベル7 unnyo8739(暇つぶしのウナギ御飯)
「そもそもなんだこの出っ張りは」から展開する強引な理不尽。こういうの大好きです。惜しむらくは全編べらんめえ調で押してほしかったところ。というか前半の私小説風の描写いらないですよね? 転んですぐに穴との会話が始まってもよかったかな?
 読んでいてしゃべる「穴」のアニメーションが脳裏に浮かびました(教育テレビの子ども番組的感じで)。綺麗に落ちてます。


1・気になる穴  MemenDers(ダーサの庵)
 タイトルいいですよね、気になります。冒頭のっけから話を大げさにしてしまっているので大ボラがインフレ現象を起こしています。モノリス(人類の進化)あたりで大ボラはエントロピーに達しますが、そこでくるりと内容はガンダム年譜になってしまいました。ぬー、ここからが腕の見せ所だったのにな〜。
 とはいえ、相変わらずのロケット・スタートでこの詰め込み具合はやっぱりすごいと思うのです。じっくり存分に練り込んだ作品で勝負してきたらどれだけの真価を発揮するのか? と常に思わせるのがダーサの赤い彗星(ダサイ彗星)のニクイところです。

by Ks_trunk | 2008-09-18 08:49

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